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東北フリーランスインテリアコーディネーター協会の旗振り役である岩藤奈生子さんのお話です。

仙台中心部のマンションで、様々なジャンルのアート、照明、仙台箪笥、愛猫に囲まれ素敵な生活をおくる、東北フリーランスインテリアコーディネーター協会の旗振り役である岩藤奈生子さん。

中学生の頃よりインテリアが好きで、壊れたものを直すといったように様々な素材に触れていた。心理学にも興味があったが、インテリアデザインを学ぶことを選択し進学。当時はデザイン関係の仕事が少なかったこともあり、卒業後は設計事務所で設計を学びながら約4年間勤務。

フリーとして働くこと

フリーとなるきっかけは、建築士の資格を取得し新しい事務所を考えていた頃、全国展開していたヤマハ家具ショップの講師に誘われたことだった。ヤマハでは当時、システムキッチンをはじめ、システム家具、マリオ・ベーニの家具などを扱っていた。月3〜4回、お客様からインテリアの相談などを受け働くなか、大沢商会のシステムキッチンのコンペに応募し入賞する。この経験が更に、フリーになることを大きく後押ししたという。またこの時、東京で開かれた表彰式でデザイナーの錚々たる方々に会う機会に恵まれたことで人脈が広がった。

フリーは、自分らしく働くことができるというメリットもあれば、苦手なことも全て自分でやるというデメリットがある。彼女の場合、メリットは現場に出て仕事ができること、デメリットは電話応対など初めて会うお客様への対応だった。

フリーになり最初の大きな仕事のお客様は、ヤマハで相談に乗っていた医者だった。病院の待合室の改装など様々な相談に応じ、最終的に億近い自宅の新築を頼まれた。「大丈夫かなと不安になったが、何よりも嬉しかった。そしてこれが自信になった。」と笑顔で話す。お客様は紹介によるものだが、客同士からの紹介ではなく、共に仕事をした際の業者、職人、メーカーの紹介によるものだという。これは仕事ぶりが高く評価されているからこそであろう。

インテリアコーディネーターとして大切にしていること

男性社会である建築業界の中でパイオニア的存在の彼女。そこで、現在に至るまでどのように邁進してきたのか伺った。「社会の中に乗ってきたかというとそうではないし、決して誰かと戦ってきたわけでもない。ユーモアを大事に、戦わずに時には自分を道化に見せてきた。“昭和の女性は戦わず現代に至る”と聞くとこの方法が正しかったかどうかは分からない。しかし、互いに気持ちよく仕事をするには相手を理解し、それに合わせるのがやりやすかったように思う。」とこれまでを振り返る。設計者はそれぞれ得意分野があるが、インテリアコーディネーターは個人住宅、集合住宅、介護/医療施設と幅広い。その中で取り組むには、豊富な知識と、周囲と良い関係性を構築することが重要という。

世の中が凄まじい勢いで変わる現代において、いかにお客様と同じ目線で考えるかを大切にしている。施主とコミュニケーションをとりインテリアを仕上げる際、役者になる。役者といっても、完全になりきるのではなく、プロの目線を残しつつ試行錯誤を繰り返す。その事前準備として、よく観察する。施主のファッションや家族関係など、言葉以上に目で見て自分の感性で感じられるものは多くあるため、見逃さないように注意する。裏を返せば、施主からよく見られているため、念入りに全身チェックを行ってから会う。施主のタイプに合わせ、七変化する彼女はまさに戦略家だ。

お客様に満足してもらえるように、視覚的に見せることも大切にしている。練り込まれたプレゼンテーション、スケッチ、サンプル、これらを利用し徹底的に説明する。また敢えて、デメリットもきちんと説明することで納得感を高める。「お客様が満足したものが答え。数学のように答えが一つではない。そのため、自分で予測できる答えをあらかじめ用意しておき、選択肢をつくっている。」この彼女のお客様への向き合い方が、10年後20年後の再依頼へと繋がっている。これが、彼女が仕事のやりがいを感じる瞬間だ。

常に好奇心を

インタビューも後半となってきたところで、彼女自身について更に詳しく伺った。約40年インテリアの仕事に携わる中で、『好奇心』を持ち続けてきたという。固定観念にとらわれることなく、 SNS、デジタル機器となんでも手にする。手にして自身で解釈し取捨選択を繰り返す。中でも、記録をつけることで見える化できるグーグルマップ機能を有効に活用し、現代社会の問題であるコロナへの自分なりの対策も行なっていた。

また、3年前までは女性ファッション誌を購入していたが、現在はサブスクリプションの雑誌読み放題サービスを利用し、多様な雑誌を拾い読みしているという。ひとつの雑誌に偏るではなく、多様な雑誌に目を通すことで、また新たなものが見えてくるため、彼女にとって大事な作業になっている。見て終わりではなく、それに対し自分の考えを持つことと、間違った情報を鵜呑みにしないように多様な書籍に目を通すこと。

若者に向けて

最後に若い方々へのメッセージをお願いしたところ、「もっと挑戦してほしい」と。「以前は、インターネットもなければ、プレゼンテーション方法を教えてくれる人もいなかったため、全て手探りで試行錯誤して乗り越えてきた。それに比べ、現在はなんでも調べれば情報を手に入れることができる。これは、昔の人たちが苦労した部分を省略できるということ。その分若い世代の方々には、その先のことを考えてほしい。そこを試行錯誤することが役目に思う。」と話す。

以前手書きでスケッチしていたからこそ、ソフトを利用しスケッチを行うと、感覚やイメージと異なりもどかしい気持ちになる。この気持ちや感覚を経験していない若者には、それに変わるようなそれ以上のものを持っていてほしい。「デジタル世代だからこその何かがあるかもしれない」と期待する。

養うべき力

インテリアコーディネーターを目指す方々に養ってもらいたいものがあるという。それは、得た情報を脳内に3Dとしてイメージできる力。プレゼンテーション、スケッチ、サンプルと視覚的に徹底的に説明したにも関わらず、いざ完成し目にした際「こうなるんだったのね」との反応を受けたことがある。施主の方が脳内に3Dを構築できていなかったのかと残念に思った。「インテリアコーディネーターとして仕事をする上でこの感覚は、大事な要素であるため、ない人は向いてない。だからといって諦めるのではなく、自分に足りないと思ったらそれを磨く必要がある。あとからでも作ることはできるから。」と五感を働かせて、自身で確かめることの重要性を訴えた。

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